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どのような発明が特許になるの? あんなものやこんなものまで?!

どのような発明が特許になるのかを説明します。

ミケ

特許がお金になることは分かったにゃ! 
でもどのような発明が特許になるのだろう

弁理士

特許の範囲はとても広いですよ

それでは、特許をとれる発明にどんなものがあるか、見ていきましょう!

目次

特許になるための3要件

 特許をとれる発明には大きく分けて以下の3つの要件があります。

① 発明該当性

 特許法上の発明に該当するか?

② 産業上利用可能性

 産業の役に立つか? 実際に利用できるか? 

③ 新規性・進歩性

 従来の発明から進歩しているか?

 これらを3つとも満たさないとだめです。ですが、逆にいえばこの3つを満たしさえすればどんなものでも特許になるのです。

以下、一つずつ見ていきましょう。

要件① 発明該当性

 特許法では、「発明」は、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」(第2条第1項)と定義されています。 

 この「発明」に該当することが特許第1の要件です。

ミケ

すごく定義が広いにゃ。なんでも発明になってしまうのでは?

弁理士

発明に該当しないものを挙げていきますね

以下、発明に該当しない具体的な例を見てみましょう。あわせて例外てきに特許になる例なども上げていきます。

自然法則そのもの」は発明にならない

例:エネルギー保存の法則、万有引力の法則、光速度不変の法則

これは誰かが発明したものではなく、初めから自然界に存在する法則を発見したものですよね。そもそも、誰かが独占できるものではありません。当然だめです。

自然法則に反するもの」は発明にならない

例:永久機関(エネルギー保存の法則に反するため)

いわゆるフリーエネルギーとかそういうやつですね。無限にエネルギーを生成して自由に取り出せる機関、というやつです。ちなみに、いまだにこれが可能だと思っていて、「すごい新発明をした」という人がちらほらといます。

ミケ

中学生のころに一度は考える!

まぁ、どっちにしろ絶対製品化が無理なので権利とっても意味ないですが。ちなみに以下のような一見永久機関に見える装置(水飲み鳥)は特許取得できる可能性があります。

引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E9%A3%B2%E3%81%BF%E9%B3%A5

これは鳥がずーっと水を飲むような運動を続ける装置です。永久機関に見えますが、実際には温度差(頭部が胴部に比べて温度が低い)を利用して熱エネルギーを運動エネルギーに変換して仕事を行っているのです。

これは、永久機関に見えるおもちゃなので、おもちゃとしてなら登録できるのです。実際水飲み鳥は日本でも実用新案登録されたことがあります。

人為的な取り決め・ルール」は発明にならない

例:ポーカーのルール、先物取引のルール

これは、広い意味では「発明」と思う人もいるでしょうが、自然法則の利用ではなく人間の決め事なのでだめです。ただし、ルールを実行するための装置・プログラム・システムは特許なります

例えば、テレビゲーム「ファイナルファンタジー」にはアクティブタイムバトル、という非常に有名なゲームシステムがあります。このアクティブタイムバトルに関する制御方法が特許になっています特許2794230「ビデオ・ゲーム装置,その制御方法および制御ディバイス」です。

アクティブタイムバトルとは、時間の経過に応じてコマンドの入力や実行ができるシステムで、それまでの1ターンごとにコマンドを入力するバトルシステムとは一線を画すものでした。

これだけ聞くと、「ゲームのルールだからだめ」となりそうですが、「ルールを実現するためのゲーム機の制御方法」とすれば特許の対象になるのです。

同様に、例えばFXトレードの取引方法も、この方法を実行する「システム」としてならば特許が取れます。有名な例として、マネースクエアHDの「トラリピ(トラップ・リピート・イフダン)」があります。「トラリピ」は、ユーザーがあらかじめ設定した条件をもとに、新規注文と決済注文を繰り返し自動で出し続けてくれる注文方法です。

 これはなかなか強力な特許です。裁判にもなった有名な特許ですが、この特許は見事に相手側の特許権侵害が認められました。

参考;見えてきたビジネス関連特許の傾向と対策、マネースクエア全面勝訴の判決 | 日経クロステック(xTECH)

 裁判に勝った特許は第5525082号「発明の名 称:金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法、プログラム」ですが、ほかにもトレード関係の特許をたくさん持っているみたいです。

 現代ではなんでもコンピュータを使って処理するので、実際には多くのゲームのルール、取引のルールが「システム」や「装置の制御方法」などとして特許にすることができます。 

 特許法は、 経済的に価値のあるものは、なるべく保護されるようにできているのですね。

「自然物そのもの」は特許にならない

 例)自然に存在する原子や微生物

 ただし、人工的に作ったものは対象になる可能性があります

 特許7562876「白マイタケ新品種及びその栽培方法」がその例になります。以下は当該特許に関連すると思しき商品です。

引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000027.000078522.html

 この白マイタケは、育成工程で着色しにくく、商業価値が高く、商品化時に着色部分の除去工程も不要とのことです。

 また、普通のものでも、製造装置や製造方法は特許になります。特許された製造方法で作られたものは特許法の保護の対象となります。

 「技術的思想でないもの」は特許にならない

例)技術とはいえないこつや美術品、データ

 フォークボールの投げ方やアート作品などですね。なお、アートは著作権法で保護されるのでご心配なく!

 データはただの記録なので、思想ではないという扱いです。ただし、特殊なデータ構造は特許になります。

弁理士

データ構造は現在注目の特許分野です

特許になるデータ構造としては、仮想通貨のデータ構造や、動画圧縮のデータ構造などです。今後はAI関連のデータ構造の出願も増えてくると思います。ちなみにXMLとかjsonみたいな汎用的なデータ構造はだめです。

 「創作として完成していないもの」は特許にならない

 また、単なるアイディアなど創作としてそもそも完成していないものも当然だめです。ただし、必ずしも試作品が必要なわけではなく、理論上の完成で足ります。ただし、薬などは実際に効果があるか実験結果が必要な場合があります。

要件② 産業上の利用可能性

 発明の定義を満たしていても、特許として認められないケースです。「産業」とは、「ビジネス」と大体言い換えられます。ただし、収益性がなくても、みんなの役に立つ。例えば公益事業などで使えるものも含みます。

人間を手術、治療または診断する方法」は特許にならない

 医療行為は特許による独占を認めると公衆衛生上問題があるため、特許の対象外です。産業として利用するようなものではない、ということですね。

 ただし、手術・診断に用いる医療機器や医薬は特許になります。以下のダビンチなどが有名ですね。これは特許製品です(関連特許はたくさんあるので省略します)。

 引用元;https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Laproscopic_Surgery_Robot.jpg

ちなみに、この2つの違いは何かというと、医療行為はそれが必要となるときは事態がすでに切迫しているから、特許として利用が制限されているかどうかを問うこと自体が、患者さんに対する医療行為の妨げになる可能性があるので、特許の対象外としたってことみたいです。医薬や医療機器は事前に準備しておくものなのでこれに該当しないわけです。

なんだか、屁理屈っぽいにゃ

弁理士

これは裁判にもなった論点です

 道徳や倫理の面だけ考えたら、医薬や医療機器も人命にかかわるようなものは特許の対象外するべきなのかもしれません。しかし、実際には、医薬や医療機器には莫大な開発費がかかるので、特許を認めた方が結果的に医療が進歩するので認めているのだと思います。

 なお、人間ではなく動物に対する医療行為は特許として認められます

実際上、明らかに実現できない発明」は特許にならない

 例)例:オゾン層の減少に伴う紫外線の増加を防ぐために、地球表面全体を紫外線吸収プラ
スチックフイルムで覆う方法

 理論上は可能でも実際にはできないものですね。

どのくらいまでが実現できるとみなされるのかにゃ?

 日本ではなく、アメリカとイギリスで特許された例ですが、高さ2万メートルにも及ぶ軌道エレベーターの特許が取得できています。WO2008101346 「SPACE ELEVATOR」です。以下は特許権者「Thoth Technology Inc. 」によるイメージ画像です。さすがにまだ本物はできていないようです。

 引用元:https://www.facebook.com/thothtechnology/

弁理士

絶対に無理! でなければOKみたいです。

そのほかの「産業上利用できないもの」も特許にならない

個人的にのみ利用される発明、学術的、実験的にのみ利用される発明はダメです。あまり、特許を出そうという人もいないでしょうが

「公序良俗に反する発明」は特許にならない

例:偽札装置、麻薬製造装置

 産業にしてはいけません、という場合です。ただし、単に国内法令に違反していることが、直ちに公序良俗に反することにはなりません。例えば特許6526165「賭博システム 」のような特許があります。以下は特許明細書の図面です。

逮捕されそうなのですが?

実際に日本でやったら逮捕されるかもしれません。しかし、特許にはなります。

これはTRIPs協定という特許の国際ルール第27条に「加盟国は、公の秩序または善良の風俗を守ることを目的として、商業的な実施を自国の領域内において防止する必要がある発明を特許の対象から除外することができる。ただし、その除外が、単に当該加盟国の国内法令によって当該実施が禁止されていることを理由として行われたものでないことを条件とする。」 があるためです。

引用元;TRIPS協定 3 | 経済産業省 特許庁

 ではギャンブルはどうかというと、これはOKな国もあります。むしろ日本でも公営ギャンブルはOKですし、近年では認可が下りればカジノもOKになりました。なので賭博関連の特許は産業上利用可能、ということですね。

要件③ 新規性・進歩性

さて、ここまでは何が特許の対象になるかを見てきました。

ミケ

意外と広かったにゃ。これなら、なんでもできそうだにゃ!

弁理士

さすがに、そう簡単にはいかないのです。

当然ですが、すでにあるものや誰でも思いつくものは特許にはなりません。

特許になるには新規性・進歩性が必要です。

新規性・進歩性とは

特許というのは、本来誰のものでもない知恵=発明に独占権を与えるものです。これはその役に立つ発明をした人へのご褒美のようなもの。当然、一定の技術的価値がなければ特許は認められません

その一定の価値が、従来技術に対する新規性・進歩性なのです。

では、どのくらい進歩していればよいのか? これはすごく難しい問題ですので、どこかで改めて詳細に取り上げたいと思います。今回はざっくりと。

さて、どのくらい進歩していればよいかですが、一般には、従来技術に対し、当業者が容易には思いつかない程度とされています。

 当業者とはその分野の専門家のことです。

 そして、この容易に思いつくとは、簡単にいうと

 ・従来技術の組み合わせや変更であり、

 ・その組み合わせや変更が、その専門分野では普通の範囲である

 ということです。

ダメな例・OKな例

 たとえば、従来発明では鉛筆のおしりの部分に消しゴムがついていたとします。まぁ、実際にありますね。そこで、まだ世の中にはないけれと、シャープペンシルのおしりに消しゴムを付けたとする。これは、専門家ならもちろん、誰でも思いつきますのでダメだということです。

たしかに、これだけではダメだにゃ

 しかし、ここでちょっと考えてみてください。シャープペンのおしりについた消しゴムを使うとき、シャーペンがノックされてシャーペンの芯が伸びてしまって、困ったことはありませんか? この問題を解決出来たら、ちょっとすごいですよね。

実はそのような特許があります。

特許7209162「消しゴム付きノック式筆記具」です。以下はその図面です。

 

 シャープペンを逆さにしたとき、おしりの部分がロックされてノックできなくなるみたいです。

 通常にはないひと工夫ある構造をしており、これは専門家でも簡単には思いつかないですね。このように、従来技術の組み合わせや変更 に加えて、一歩踏み込んだ高度な工夫があれば、特許になるのです。

有利な効果の参酌ーその発想はなかった!が重要

 また、仕組みはそれほど高度でなくても、そんなの普通は思いつかないよね、というもので、かつ、一定の有利な効果があるものも特許されます

 例えば以下の製品は特許7497227「筆記具」。「Ninipie (ニニピー)」という名前で商品化されているみたいです。

引用元;https://www.atpress.ne.jp/news/237762

 AMAZONの商品説明によると、『「書く」と「引く」が1つのペン先でできる、ペン&マーカー「Ninipie (ニニピー)」です。0.5mmのニードルペンと、裏移りしにくいマーカーペンが 1本に!クルッと回転させて、使い分けられます。ニードルペンとマーカーペンでインクの色が異なるので使いやすく、1本で2役をこなせます。』とのことです。

 なかなか面白い発明です。

 私の経験上、良い特許は、高度な仕組みより、むしろ単純な仕組みで、かつすごく役に立つもので、その発想はなかった!といわせるものです。このような発明のほうが、製造しやすく売りやすいからです。

 

いろいろなものが発明になるのはわかったにゃ!

弁理士

次回は発明の成功例を見ていきましょう!

 次回は「お金になったの? よく見る大成功発明」みたいなテーマです。

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